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台風の残滓(4)

「お待たせ」
 切符を買い終えた夏美先輩が戻って来た。僕達は改札をくぐってホームへ下りる。
「わたしの家、A町にあるんだけど、電車だと不便なんだよね。いったんK駅まで出なくちゃいけないの」
「そうですか。面度くさいですね。でもA町から自転車だと疲れませんか」
「まあ、結構疲れるかな。特に雨の日は大変。うちの高校、自転車乗る場合、レインコート着るのが決まりでしょ。あれ着て体動かすと熱いのよね。もう汗ぐっしょりになっちゃう。特に夏なんかサウナ状態」
「大変なんですね」
「うん。それに高校生でレインコート着てる子なんか、めったにいないでしょ。だから、ちょっと恥ずかしいんだよね。特に地元で中学の時の知合いにあったりすると、うひゃーって思っちゃう」
「へえ、以外ですね。先輩でも人目を気にしたりするんですか」
「以外って……わたし、十七歳の女の子よ。そりゃあもう、いろいろと恥じらいを感じるお年頃な訳よ」  
 そんな会話を続けるうちに列車が到着した。
 まだ早い時間なので車内は空いていた。席に座りおしゃべりをしていると、あっという間にK駅に着いてしまった。
 ホームへ降りると、雨はだいぶ小降りになっていた。
「台風それたみたい」
「そうみたいですね。でも、明日も部活はむりっぽいですね」
「そうねえ……雨やんだとしても、グランドぐちゃぐちゃだろうから」
 僕達はホームを歩いて行き、階段を登り、構内広場に出る。そして、不本意ながらお別れの言葉を言おうとしたときであるーー
 先輩が何か思い付いたような表情をして、僕の顔を見つめてきた。
「ところでさ、山崎君って、家から駅まで何で通ってるの?」
「自転車ですけど」
 ふうん、と先輩は何やら意地悪そうな笑顔を浮かべた。
「じゃあ、もちろん校則だから、ちゃんとレインコート着てるよね」
 い……いや……、と僕は口ごもる。
「着てないみたいね。だめだぞ、校則やぶっちゃ」
「そういえば、確かにまずいですね」
「うん、そうよ。それで、わたし部長だから、部員を監督する義務があるのよね。ちゃんと校則守るって、約束してくれる?」
「約束します」
 僕が返事をすると、先輩は再び意地悪そうに笑った。
「それじゃあ今日は、どうやって帰るつもりなのかな」
「そ、それは……」
「もしかして、いきなり約束やぶるき?」
「だって、そう言われても、今日はレインコート持ってないし……」
「そうよね。ないんじゃしょうがないわよね」
 先輩はそういうとバックを開けて、先ほど着ていたレインコートの入った袋を取り出した。「って言うと思っただろうけど、残念でした。わたしが貸してあげちゃうんだな」
 僕はしばし絶句する。
「そ、そんな……悪いですよ……」
「ううん、悪くない悪くない」
 首を振りながら、先輩はレインコートの袋を押しつけてきた。そして、傘は返してね、と折り畳み傘を代わりに受け取る。 
「ありがとうございます。使わせてもらいます」
 僕は先輩のレインコートを見つめながら、やっとのことでそう言った。
「ほんとにちゃんと着る」
 先輩は腕を組む。「部長としての責任を果たすためには、やっぱり着てるところを見ないとね」
「も、もしかして、ここで着替えろっていうんですか」
「もちろん」
 でっ……でも……、と僕は周りを見渡した。ラッシュの時間ではないが、それなりに人の数は多い。こんなところで女の子に見られながら着替えをするのは、ちょっとどころかかなり恥ずかしい。そんな僕の様子を見て、少しSっ気のある先輩はますます嬉しそうな顔をする。
「ほら、観念しなさい。早くしないと知合いが通るかもしれないぞ」
 僕は震える手で袋を開け、レインコートを取り出した。ゆっくりと広げる。そしておそるおそる腕を通したとき、皮膚に伝わるひんやりとした感触に、悲鳴をあげそうになる。
 先輩は楽しそうに僕の様子を観察している。僕は興奮と羞恥で頭がくらくらしてきた。もちろんこんなところで、しかも先輩の見ている前で欲情するわけにもいかず、必死に理性を保とうと努める。
 どうにか着用を終えると、先輩が近付いてきて、襟元に手を伸ばしてくる。僕は思わず身をすくませる。先輩の手は僕の止め忘れた一番上のぼたんを止め、頭にフードを被せた。
「せ、先輩」
 混乱の中で僕が発した声はうわずっていた。先輩が不思議そうな顔をして、なに? と聞いてくる。
「あ、あの……レ、レインコート、明日までに返します。もし雨降ったら困るから……そ、そうだ、絶対ちゃんと洗って返します」
「なんだ、そんなことか。いいよ、気にしないで。古くなって痛んできちゃったから、この前新しいの買ったとこ。だから、あげるよ。って、いらないか」
「い、いえ、いただきます。ぜ、ぜひとも、頂戴いたします」
 僕の口調が可笑しかったようで、先輩は吹き出したように笑った。
「そのレインコート、けっこう着たからね。最近、それ着て汗かくと、匂いが制服についちゃって。女子高生から異臭がしたら、ちょっとまずいでしょ」
 僕は鼻に神経を集中する。塩化ビニールの香りに混って先輩の香りが漂ってきて、興奮が全身を駆け巡る。
「山崎君、今、匂い嗅いだでしょ。におう? でも、わたしみたいなかわいい女の子の汗は、貴重なんだからね」
 それは重々承知しています、と僕は心の中で頷いた。その時、列車の到着を告げるアナウンスが響く。
「あ、電車来たみたいだから行くね。ちゃんとレインコート着て帰るんだぞ」
 そう言い残して夏美先輩は去って行った。僕はレインコートの中で先輩の香りに包まれながら、しばらくの間ぼおっと立ち尽くしていた。
 駅の建物を出ると雨はすっかり止んでいた。レインコートを着込んだ自分が途方もなく場違いで、僕は我に返り、呆れた気分になってしまった。

(END)

テーマ : フェチ
ジャンル : アダルト

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