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台風の残滓(1)

 重そうな雨がアスファルトを打っている。灰色の厚い雲がくまなく空を覆い、大地にのしかかっている。ガラス扉に付着した水滴がゆっくりと移動し、他の水滴と交わって、勢いを増して流れ落ちる。
 登校口の中で雨宿りを始めてからかなりの時間が経過するが、雨足は強くなる一方だ。下校していく生徒の姿もぽつりぽつりとしか見掛けなくなってきた。
 そろそろ帰るか。
 そう思い、僕はバッグに手をかける。教科書をかき分け、その下から折り畳み傘を取り出そうとしたときであるーー
 衣擦れの音が薄暗い登校口に響いた。
 しばし後、下駄箱の影から現われたのは、セーラー服の上に透明なレインコートを着た少女の姿だった。目が合う。
「山崎君どうしたの、こんな時間まで残って。今日雨で部活ないのに」
 夏美先輩はそう言いながら歩み寄って来た。僕は、いえ……別に……、と曖昧な返事をしながら目をそらす。再び視線を合わせたとき、先輩は口元に笑みを浮かべていた。
「ふうん、なるほどねえ、彼女ができたわけか。放課後の教室で愛の語らいをーー」
「そ、そんなんじゃないですよ」
 僕は慌てて口をはさんだ。
「まあまあ、そう照れないで」
 と先輩は言った後、一つ大きな溜息をついた。「まったく一年生のくせに、先輩でしかも部長のわたしを差し置いて、先に彼女を作るなんてーー」
「だから違うって言ってるじゃないですか」
「まっ、そういうことにしといてあげるわ」
 先輩はからかうような口調で言った。「ところでわたし、口は堅いんだよね。だから……」
「だからなんですか?」
「誰にも言わないから、どこまでいったか教えてよ」
「マジで怒りますよ。それより先輩こそ、こんな時間まで何やってたんですか」
「わたし? わたしは生徒会」
 夏美先輩は生徒会役員をしている。陸上部の練習はけっこう忙しいので兼任は大変だろう。ましてや先輩は部長だ。それなのに前回の学力試験で成績優秀者として名前が載っていた。
「なんでそんなに頭いいんですか」
 疑問をそのまま口にしてみた。突然の質問に先輩は一瞬、意表を突かれたような顔をしていたが、すぐに得意そうな表情になる。
「才能よ、才能。天の恵。でも、わたしみたいに恵まれた女の子は苦労が多いのよ。かしこくて、美人で、スポーツも得意で、しかも性格がいいと、嫉妬されて大変なんだから」
「はいはい、そうですか」
「そうなのよ。本当にそうなの。なのに、なんで彼氏ができないんだろ」
「なんででしょうね」
「山崎君、立候補してみる」
 します、と思わず言いそうになり、慌てて口を閉ざした。夏美先輩に思いを寄せる男子生徒の数は、おそらく一桁では効かないだろう。本人が冗談めかして言っていることは、あながち見当はずれではない。もし先輩が人並に恋への関心をもつ少女なら、あっという間に彼氏ができるに違いない。
「もしかして山崎君、傘ないの?」
 僕はギクリとする。一瞬間を置いて、ええ、と短く答えた。すると先輩はバッグを開け、中から折り畳み傘を取り出した。
「もう、台風がこっち向かってるって、天気予報でいってたじゃない。どうせ朝、雨降ってなかったから、傘持ってこなかったんでしょ」
「はい。その通りなんです」
 先輩は少し呆れ気味の顔をして、傘を差し出してくる。僕が、ありがとうございます、と言って受け取ると、レインコートのフードをかぶり、じゃあまた明日ね、と手を振って、雨の中へと出て行った。僕はその姿を見送りながら、今日は収穫だった、と思わずにんまりしてしまう。

テーマ : フェチ
ジャンル : アダルト

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